前回紹介した論文 (2012-08-24 - 趣味と物欲) には、インク消しの処方が書かれており、A液:シュウ酸水溶液、B液:次亜塩素酸ナトリウム水溶液 となっています。シュウ酸は、アスコルビン酸、クエン酸と比較した記事 (2012-07-17 - 趣味と物欲) に書いたように、キレート能のある還元剤、次亜塩素酸ナトリウムはハイターなどでお馴染みの酸化漂白剤です。ガンヂーインキ消だと、赤液がシュウ酸水溶液、白液が次亜塩素酸ナトリウム水溶液で、赤液→白液→赤液と塗りますから、還元→酸化(漂白)→還元として消していることになります。
還元して古典ブルーブラックを消去するのは、古典ブルーブラックを使っていた万年筆をアスコルビン酸で洗浄する (2010-03-02 - 趣味と物欲) のと同じ原理です。今回はアスコルビン酸で古典ブルーブラックの筆記線が消せるか試してみました。
サンプルは、Wagner2012古典ブルーブラックインク(青緑系)と古典だったころのパイロット 旧ブルーブラックインキです。筆記から十日後に試験を行いました。
サンプルの右端の部分を拡大したもので、左がWagner2012、右がパイロット旧BBです。撮影には、デジタル顕微鏡モードのあるデジカメ (PENTAX WG-2) を使用しました。
たっぷりの流水で洗い流したところです。水だけだと、しっかり筆記線が残っています。
10%のアスコルビン酸水溶液に1分程度浸漬した後です。筆記線がかなり薄くなりました。没食子酸鉄(タンニン酸鉄)の黒色が還元されて消え、残った色素の色で青く見えていると考えられます。
更に、ガンヂーインキ消の白液を塗ってみました。Wagner2012に使用した青の色素は、パイロットのものより漂白されにくいようです。ロディアの紫のラインも漂白されずに残っています。