趣味と物欲

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万年筆用古典ブルーブラックインクのアスコルビン酸洗浄法に関するQ&A

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1. 古典ブルーブラックでできる沈殿物や黒い滓は酸化鉄なの?

いいえ、「タンニン酸あるいは没食子酸と鉄(III)イオンのキレート化合物」です。長いので、短く表記するなら「没食子酸鉄」とするのがよいでしょう。こちら(古典ブルーブラックインクの黒の色は鉄の錆の色? - 趣味と物欲)の実験結果もご参考にされてください。wikipedia:酸化鉄とは別のものです。

2. アスコルビン酸は超音波洗浄器を使わないと効果が無いの?

いいえ、アスコルビン酸洗浄法を最初に公開した記事(古典ブルーブラックインクの万年筆へのこびりつきを化学的に落とす。 - 趣味と物欲)では超音波洗浄器では落ちない汚れもアスコルビン酸を加えれば落ちるということを見ていただくために、超音波洗浄器を併用していますが、その後多くの方の検証で、アスコルビン酸だけで充分効果があることが分かっています。
万年筆評価の部屋:月曜日の調整報告 【 Pelikan コンチェルト 18C-B こりゃまた何とも・・・ 】より

ペン芯もインク滓にまみれていてなかなか綺麗にならないので、アスコルビン酸水溶液に浸け、ピンセットで摘んで液の中を1分ほど振り回したら、ウソのように綺麗になった。


↓物理的にこすったりしなくても、このとおりピカピカになります。

3. クエン酸ではどうでしょうか?

クエン酸やシュウ酸の効果をアスコルビン酸と比較した実験(アスコルビン酸の古典ブルーブラックインクの洗浄力をクエン酸やシュウ酸と比較する。 - 趣味と物欲)をご参照ください。古典ブルーブラックの洗浄に必要な性質は、酸性と還元力とキレート能です。クエン酸はどれも有していますが、アスコルビン酸より効果が弱く、シュウ酸はアスコルビン酸と同等かそれ以上の洗浄力がありますが、安全性と入手性に難有りということで、やはり現時点では、アスコルビン酸がベストではないかと思います。

4. 重曹ではどうでしょうか?

重曹(炭酸水素ナトリウム)の水溶液は弱アルカリ性になりますから、その洗浄効果は油汚れなどの鹸化だと考えられます。よって、古典ブルーブラックインクの洗浄には、ほとんど効果が無いでしょう。

5. C1000タケダやサプリメントのビタミンCではどうでしょうか?

アスコルビン酸はビタミンCの別名ですが、C1000タケダはあまり効果が無かったと聞いています。一方サプリメントのビタミンCカプセルの中身を出して溶かして使われている方は効果があったそうです。
C1000タケダなど液体に含まれるVCは、酸化されており還元力が低いことが予想されます。よって洗浄に使うアスコルビン酸水溶液は、水に溶かしてフレッシュなうちに使った方が良さそうです。またサプリメントには、各種添加剤 (デンプン、糖類、セルロース類など) が含まれていることがありますので、原材料を確認して、極力添加物が少ないものを使われた方が良いでしょう。
またアスコルビン酸でなく、アスコルビン酸ナトリウムは、水溶液が中性付近になりますので効果は落ちます。別途酸を加える必要があります。

6. アスコルビン酸洗浄は定期的に行った方が良いの?

いいえ、古典ブルーブラックを使っている万年筆でも調子良く使えているのなら、アスコルビン酸洗浄をする必要はありません。
このブログは万年筆適当主義を標榜しています。
pgary.hatenablog.com

アスコルビン酸洗浄法は、例えば、古典ブルーブラックを使っていたビンテージ物の万年筆で、長期間放置して固まらせてしまったようなものの洗浄に特に有効な方法だと考えられます。万年筆評価の部屋:月曜日の調整報告 【 またしても Pelikan #500 14C-M でじゃぶぅー?】

参考文献

  • 趣味の文具箱 vol.16 64ー67 すてラボ! 古典ブルーブラックインク研究
  • 趣味の文具箱 vol.23 106-107 古典ブルーブラックインク研究

参考リンク