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博多天神界隈を本と文房具(万年筆とインク)と電子ガジェットを探して徘徊しています。

プラチナの古典インク新色発売を前に知っておいて欲しいこと3題

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1. 古典インクという言い方は間違いなのか?

悩ましい問題です。所謂古典インクを表す言葉として、パーマネントインク、混合型インク、没食子インク、iron gall inkなどが使われてきましたが、どの言葉もちょっとずつ説明不足なところがあって、ちゃんと定義するなら「タンニン酸あるいは没食子酸および鉄イオンを含む万年筆用インク」と長くなるので、一言で表せる「古典インク」が便利なのです。*1
日本語も時代によって変化します。昔々ブルーブラックと言えば古典インクだった時代は「ブルーブラック」と言えば良かったのですが、色だけ似せた染料のブルーブラックが出てきて「パーマネントインク」と区別されるようになりました。しかし今やパーマネントと言えば顔料インクの時代です。
じゃあ「没食子インク」や「iron gall ink」という言い方はどうなのかと言うと、そもそも没食子やgallとは植物にできる虫瘤のことで、現在の万年筆インクは態々虫瘤からインクを作りませんし、じゃあ「没食子酸鉄インク」や「タンニン酸鉄インク」ならどうかと言うと、かつて古典インクの全盛時代には、没食子酸のみ含むもの、タンニン酸のみ含むもの、没食子酸とタンニン酸を混ぜたものなど、メーカーによって処方が違っていたので、これも全てを言い表わすには足りないのです。
今や古典インクを作っている唯一の国内メーカーであるプラチナ社が古典インクと呼び始めたので、もう古典インクで言いんじゃないでしょうか。

2. 古典インクはそんなに面倒なのか?怖いのか?

何事も使い方次第です。基本を知ってちゃんと使えば大丈夫。
一口に古典インクと言ってもメーカーによってずいぶん違います。鉄分の多さで比べると、プラチナ<ペリカン<<R&K<ダイアミン レジストラーズ という並びで、鉄分が少ない方がペンには優しいですが、多い方が耐水性や耐光性は高くなります。
また、使われている酸の種類が、プラチナやペリカンは硫酸、R&Kやダイアミン レジストラーズは塩酸で、硫酸の方がペンには優しいです。*2
総じて万年筆メーカーの古典インクは万年筆への影響が少なくなるように作られています。

2-1. 古典インクは金ペンでないと使えないのか?

古典インクの酸に耐えるように金ペンになったという経緯はありますが、鉄ペンについてもステンレスの改良が進み、現在の鉄ペン先は古典インクに耐えられます。*3
古典インクを採用し続けているプラチナもペリカンも鉄ペンを販売していますし、プラチナのプレピーのブルーブラックは古典インクのカートリッジが付属しています。
ただ、ペン先自体は耐えられても、ペン先に施された鍍金、ペン先に近い所にある飾りリングや金属部分は腐食されることがあるので、気をつけてください。

3. 古典インクのアスコルビン酸洗浄法とは?

このブログで2010年に世界で初めて公開された、安価で安全で効果的な古典インクの洗浄法で、アスコルビン酸 (ビタミンC) の粉末を適当 (1%くらいで充分) に水に溶かして、漬けたり吸引したりするだけの簡単な方法です。*4
古典インクが固まった時に出来ているのは、鉄(II)イオンが酸化された鉄(III)イオンとタンニン酸あるいは没食子酸がキレート化合物を作り水に溶けなくなったものです。
このキレート化合物を溶かすには、1. 鉄(III)イオンを還元してキレートを作り難い鉄(II)イオンにする。2. 酸性にしてキレートを作り難い方に平衡を移動する。3. キレート能のあるもので水に不溶性のキレート化合物ができるのを邪魔する。などの方法がありますが、還元性+酸性+キレート能があり安全性も高いアスコルビン酸が現状ではベストです。
薬局やドラッグストアで購入できる局方品もありますが、食品添加物グレードのものを大袋で購入して、余りは料理に使ったり、飲物に混ぜたりできます (紅茶に入れてレモンティ、コーラに入れてレモンコーラなど)。
手軽に少量だけ購入したいという時は、コンビニでDHCのビタミンCカプセルを購入し、カプセルを開けて中の粉末のみ溶かして使うという方法があります。
なお、ビタミンC入りの飲料など液体として売られているものは効果がほとんどありませんので、粉末を買ってきて使用直前に溶かしましょう。

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