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万年筆インクの宿題:結局モンブランのバーガンディレッドは古典インクじゃありませんでした。

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モンブランのバーガンディレッドが鉄とタンニン酸や没食子酸を含む古典インクではないかという問題は、モンブラン自ら、StarWalker Midnight Blackのルテニウムコーティングがバーガンディレッドに含まれる鉄ガリウムで、変色を起こす恐れがあるとアナウンスしたことにより始まりました。
pgary.hatenablog.com

これまでのモンブランの戦略や、かつてのバーガンディレッドにあたるボルドーインクの性質から、それは考え難いんじゃないかという記事を一旦書いたものの、その後の検討で、古典インクではないことを証明することができず、モンブランがiron-gall inkだと言っているのだから、もうそれで良いかと半分投げた状態でした。
pgary.hatenablog.com
色々面倒な方法を考えていたのですが、高校化学の教科書に載っている簡単な反応を忘れていました。鉄(II)イオンにヘキサシアニド鉄(III)酸カリウム (フェリシアン化カリウム) を加えることで、ターンブルブルーの濃青色沈殿ができる反応です。

ヘキサシアニド鉄(III)酸カリウムの0.1M水溶液を用意します。

この水溶液に、用意した万年筆インクを一滴ずつ垂らしていきます。左からバーガンディレッド、プラチナ クラシックインクのシトラスブラックとカシスブラック、プラチナ ブルーブラック、染料インクのパイロット ブルーブラックです。

左端のバーガンディレッドと右端のパイロット ブルーブラックは色素で水溶液上層に色が着いているだけですが、古典インクのシトラスブラック、カシスブラック、プラチナ ブルーブラックは濃青色の沈殿ができています。

ヘキサシアニド鉄(III)酸カリウム水溶液が黄色なので、シトラスブラックが沈殿の様子が見やすいでしょう。濃青色沈殿ができているのが良く分かります。

カシスブラックはちょっと見難くはなりますが、良く見ると濃青色沈殿ができているのが分かります。

プラチナ ブルーブラックは青の色素のため非常に見え難いですが、中層付近の色の薄いところで細かい沈殿が落ちていっているのが分かります。

それに対して、パイロットのブルーブラックは沈殿ができていません。

そして今回の試験の本命であるモンブラン バーガンディレッドも沈殿ができませんでした。この結果は、鉄(II)イオンを含んでいないということなので、古典インクではないと結論付けて良いでしょう。

結局、StarWalker Midnight Blackのルテニウムコーティングを変色させたのは何だったのかは分かりませんが、少なくともモンブラン公式言う、バーガンディレッド中のiron gallが原因では無いようです。

フェリシアン化カリウムはその色から赤血塩とも呼ばれますが、写真の現像に使われる試薬なので、カメラ店などで扱っています。