そもそも、万年筆用の古典ブルーブラックインクを自作しようと思いたった切っ掛けは、森師匠のインキと科學の紹介文 (万年筆評価の部屋:解説【インキと科學】 その21, 21回に他の回へのリンクがまとまっています) を読んだからなのですが、これまで実物を読んだことはありませんでした。
古本で探してもありませんし、東京のPen Station Museumで聞いたときも、今ここには無いと言われ、HOME | 万年筆専門店ユーロボックス EUROBOXで閲覧できるらしいと、行こうとしたら辿りつけなかったり、臨時休業だったり、なかなか機会に恵まれませんでした。
今回は意識していなかったのですが、神戸のPen and message. 万年筆 & ステーショナリーに寄らせていただいたところ、閲覧可能な書籍の中に「インキと科學」の本がありましたので、机に向かわせていただいて、じっくり読ませていただくことができました。変な客だと思われたでしょうね、申し訳ありませんでした(^^;
実際に読んでみると、新たな発見など多々ありまして、情報カードにメモを取りながら読ませていただきました。現在もパイロットは、フリクションなど独自のインキの技術を持っていますが、当時も古典ブルーブラックについて深く研究されていたことが分かります。私がやっていることは、まさに車輪の再発明で、色々やってみると結局「インキと科學」に書いてある内容になっていくのだなあと感心させられました。
メモを取ったところからいくつか紹介してみます。
- 古典ブルーブラックに色素が配合される以前は、適当に酸化させた、酸化インキが使われていた。
- 古典ブルーブラック原液の色は薄緑紫色 本来は透明な没食子酸インクの原液 - 趣味と物欲
- 石炭酸と硫酸第二鉄で紫色になる。
- インキの沈殿は第二鉄の産生でなくコロイド状態のタンニン酸の沈殿、没食子酸のみで作れば沈殿は少なく出来る。
- タンニン酸の溶液の方が、没食子酸の溶液よりも紙の上では広がり難い。
- インキの保存剤として、石炭酸以外にサリチル酸や樟脳も使われている。
- この本の書かれた時点で、シェーファースクリップインクには既にタンニン酸は使われていない。
- 一方この頃のパイロットのブラックインキはカーボンを配合している。
- インキ屋のインクはみかけの沈殿を減らす(アラビアゴムなどで粘性をつける)、万年筆屋のインクはみかけの沈殿はあっても隠れた沈殿を減らす。
- クロームログウッドインキは五倍子鉄インキより耐久力が弱い。 エルバンの公証人用インクの意外に身近な正体 - 趣味と物欲、古典的万年筆インクの中でも特に古典色の強いインク4種を二価鉄指示薬紙で評価してみる。 - 趣味と物欲
また色々と創作意欲が湧いてきます。