趣味と物欲

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更に自作古典ブルーブラックインクの新処方は耐水性が低いかもしれない

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自作古典インクの新処方について、これまでに「ペンには優しいが、裏抜けはしやすい」、
pgary.hatenablog.com

「酸化による変色が遅い」という記事を書きましたが、
pgary.hatenablog.com

残念ながら耐水性も低いようです。

5月8日に筆記しているのは、「自作古典ブルーブラックの新処方は酸化による変色が遅くなったかもしれない - 趣味と物欲」で使ったのと同じもので、本日で筆記後6日経っています。下段が今日書いたばかりのものです。

鉛筆で印を付けているところから右側の部分を流水にさらしました。旧処方のものは、6日経ったものも、書いた直後も、没食子酸鉄による黒い筆記線が残っていますが、新処方では、まるで染料インクのように流れてしまっています。

この新処方、要は塩酸の代わりにクエン酸 (有機酸) を使ったものなのですが、乾いた後もクエン酸は揮発しないため紙の上に残っており、再度水に触れたことで、クエン酸の酸性とキレート能で、クエン酸*1となって流れてしまったものと考えられます。

下記の記事で書いたように、クエン酸アスコルビン酸程ではないですが、古典インク(没食子インク)のタンニン酸鉄あるいは没食子酸鉄を溶解することができます。
pgary.hatenablog.com

クエン酸を加えると、洗浄剤がインクの中に入っているようなものですから、洗浄性は良くなるかもしれませんが、それ以外の耐水性、保存性、筆記性 (裏抜けや散り難さ) は落ちます。
塩酸や硫酸を使用した古典インクの場合、洗浄剤としてクエン酸より優れたアスコルビン酸を別に容易しておけば、洗浄できる上、耐水性や保存性も確保できます。
ペンへの安全性は高くなったかもしれませんが、古典インクの優れた性質も無くなってしまったので、これでは鉄分の入っていない普通の染料インクで良いですね。この処方はお蔵入りにします。

*1:クエン酸鉄は水溶性が高い