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博多天神界隈を本と文房具(万年筆とインク)と電子ガジェットを探して徘徊しています。

万年筆インクの種類、染料インク、古典インク、顔料インクの見分け方

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WAGNERの森師匠の質問掲示板 (インクに関する質疑応答) にインクの見分け方に関する質問があったので、ざっくりと答えてみましたが、今まで調べて書いたものをまとめる意味で、こちらのブログでも詳しく書いてみます。

1. インクを良く観察する。(色調、澱や沈殿、匂い、瓶を振ってみた時の器壁の濡れ方など)
2. 紙に書いてみる。(筆跡の発色や光り方など) 書いたものを水にさらしてみる。(筆跡の残り方など)
# まずしっかり観察することで様々なことが分かってきます。
# ワインのテイスティングなら更に味をみるのでしょうが、インクの成分に何が入っているのか分からないのでお勧めはしません。例えば、古典ブルーブラックだったころのパイロットBBでは、安定化のために亜砒酸 (三酸化ヒ素, As2O3) が使われていたことがあります。
pgary.hatenablog.com

3. ペーパークロマトグラフィで分離してみる。
# ろ紙 (無ければ画用紙など吸水性の良い紙) を細く短冊状に切り、下から2cmくらいに鉛筆で×印を付け、そこに調べたいインクをスポットして (ちょんと微量付けて)、ろ紙の下端1cmを展開液につけてぶら下げます。展開液は水と消毒用エタノールなど複数でやるとなお良い。
pgary.hatenablog.com

# 1~3までやって、2で水に流れにくい、3で原点 (インクをスポットした位置) にインクが残っているとなると、耐水性のある染料なのか、顔料なのか、古典なのかを完全に見分けるのがちょっと大変です。

4. 時間がかかっても良いなら、2で書いたものを日光やUVランプにあてて放置してみる。
# 染料や古典の染料成分は消えるが顔料は残る。
pgary.hatenablog.com

5. ガンヂーインキ消しで消えるか試してみる。
# 顔料は消えない。ガンヂーインキ消しで染料を消している白液の成分は、次亜塩素酸ナトリウムなので、同じ成分のハイターやミルトンで消えるか試してみることもできます。
pgary.hatenablog.com

6. 顔料かどうかを見分けるなら、コロイド溶液のチンダル現象を利用する。
# 透明瓶に入れた精製水に、調べたいインクを1滴落とし、レーザーポインター (赤色レーザーの出力は低いものでよい) でチンダル現象が観察されるか調べる。
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7. ヘキサシアニド鉄(III)酸カリウム (フェリシアリウム、赤血塩) 溶液に滴下してみる。
# 鉄(II)イオンがあるとターンブルブルーの濃青色沈殿ができる。フェリシアン化カリウムは写真の現像に使うのでカメラ店や薬局で購入可能
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8. 二価鉄試験紙で試験してみる。
# 鉄(II)イオンがあると二価鉄試験紙が赤くなることを利用しています。モンブラン バーガンディレッドの調査の時は、赤の色素が邪魔して使えませんでしたが、赤色の濃さによって含まれる鉄のおおよその量を視覚的に確認することができるのが利点です。
赤くなることからpH試験紙と勘違いされることがあるのですが、pHを見ているわけではありません。pHは古典インクが低いことが知られていますが、染料インクでも同程度に低いものが存在するので、これだけでは判別できないのです。
pgary.hatenablog.com
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何か分からない万年筆インクがあったら、私ならこんな順番で調べていきます。

ガンジー(ガンヂー)インキ消【万年筆用】 IR-700

ガンジー(ガンヂー)インキ消【万年筆用】 IR-700

NNC 赤血塩(50g)

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