市立図書館に禁帯出でパイロット万年筆の社史「パイロットの航跡」があるというので読みに行きました。
社史に載っている万年筆インキの写真は下図の左側のグレーの丸が画かれたものでした。パイロットのインキはこの後下図の右のものへとデザインが変更されて、その時ブルーブラックはまだ古典インクでしたので、少なくともこの社史が刊行された1979年には、パイロットBBは古典インキだったのだと推察できます。
社史の中から気になった点をいくつか、Gemini PDAでメモを取ってきました。
p128 インキ原料が物資統制でしだいに不足し、、、五倍子は中国産であるため、輸入の減少とともにタンニン酸は局方から工業用となり、さらに水性となって、ついにはスマックタンニン等、だんだん質が低下していった。
戦時中の物資統制により質が落ちていったようですが、パイロットではそれまで局方品、つまり医薬品用のタンニン酸を使っていたのですね。またスマックタンニンというのは、スマックという植物の葉から取れるタンニンで主に皮を鞣すために使われていたものだそうです。
p134 昭和13年9月 固形インキの製造を開始
p135 昭和13年11月 第15合金、14年3月 第27合金を開発し、第27合金は、硫酸はもちろんのこと塩酸にも耐えうるものだった。
第15合金、第27合金のことは、下記のように昭和14年の「萬年筆と科學」にも出てきますので、開発されてすぐに公表されたことが分かります。
5%の塩酸に耐える第十五合金、更に9%の塩酸に耐える第二十七合金を完成し、これで白ペンを製造した。
鉄ペンと古典ブルーブラックの話は、少なくともパイロットに関しては戦前に解決しているではないですか。 - 趣味と物欲
p136 16年5月 クローム、タングステン、ニッケル、ボロンを成分とするパイロスミンCの開発に成功、17年3月にはインキに対する耐酸性をさらに強めたパイロスミンDを実用化、イリドスミンの使用は17年7月に禁止された。
パイロスミンについては下記のように先人の方の記事がありました。
戦中は物資不足でペンポイントのイリジウムすら使えなかった。そこでパイロットは「パイロスミン」と名付けた超硬合金を開発、代替剤としていた。
— しゅん (@Shun_I_715) August 11, 2018
これの研ぎは面白い。宝石のような独特のカットだ。上は平らだし、ニブの下側からペンポイントを溶着したのかも?スタブ調の字が書ける良い研ぎだ。 pic.twitter.com/lqlorv2aAJ
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