趣味と物欲

博多天神界隈を本と文房具(万年筆とインク)と電子ガジェットを探して徘徊しています。

古典インク(没食子インク)は「染料⊂古典」じゃなくて「染料∩顔料」じゃないか説

当ブログではアフィリエイト広告を利用しています

 あとで読む

ペリカンジャパンや大手文具店がペリカン 4001ブルーブラックは染料インクであると説明していることに対して、「古典インクもその成分はすべて溶けているのだから染料インクであって、ペリカンが4001ブルーブラックを染料インクだと説明しているのは間違いではない」と擁護している向きに対して、使用上の注意が異なる古典インク(没食子インク)を、染料インクだとメーカーや文具店が説明するのは不誠実なのでは?という記事を書いたことがあります。
pgary.hatenablog.com

上記の記事は、私自身、古典インクは染料インクの一種である、つまり「染料⊂古典」という前提に立って書いていたのですが、そもそもその前提が間違っていたのではないかというのが今回の記事の主旨です。

染料が入っていない古典インク(没食子インク)の原液を調製した直後は、上手に作れば透明性の高い溶液にすることができます。この状態なら染料インクと言ってもよいでしょう。
pgary.hatenablog.com


しかし上図の右側の状態をキープするのは極めて困難と言うより不可能です。一晩も経てばどんどん黒くなってきます。


この黒い色は、二価鉄が酸化した三価鉄とタンニン酸や没食子酸が錯体を作ってできた不溶性微粒子によるものと考えられますので、ある意味顔料インクと言えます。
市販の古典インク(没食子インク)には、未開封の新品の状態であっても、この不溶性微粒子が少なからず含まれていますので、古典インクは染料と顔料の混じったもの、「染料∩顔料」というのが正確ではないでしょうか。

図にすると下記のイメージです。

万年筆インクを3分類するのは、その性質や使用上の注意点が大きく異なるから。 - 趣味と物欲 の記事にも書きましたが、ブルーブラックと言えば古典インク(没食子インク)のことを指していた時代の文具系雑誌や本では、古典インクのことを「混合型インク」と表記しているものがあります。奇妙な表現だと思っていたのですが、案外的を射た用語だったのかもしれません。