趣味と物欲

博多天神界隈を本と文房具(万年筆とインク)と電子ガジェットを探して徘徊しています。

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万年筆用の古典ブルーブラックインク(古典インク)について、文献を調査し、自ら実験してきた記録の主要な記事まとめ

鉄を含む万年筆用インクである古典ブルーブラックインクについて、文献にあたり、色々な実験をして記事を書いているのですが、自分でも何を書いたか分からなくなることがあるので、ブログのトップに表示します。
これまでの経緯は下記の一連の投稿から、力作です^^)ノ
pgary.hatenablog.com

古典ブルーブラック (古典インク、没食子インク、iron gall ink) とは?

古典ブルーブラック (古典インク) という言葉をこのブログでは、「タンニン酸あるいは没食子酸および鉄イオンを含む万年筆用インク」と定義しています。この定義にあてはまる市販のインクは、メジャーどころでは、プラチナとペリカンのボトルとカートリッジのブルーブラックインクモンブランのブルーブラックと旧ミッドナイトブルーのボトル (ただしどちらも現行品ではない)、ラミーのブルーブラックのボトル*1ローラー&クライナー(R&K)のサリックスとスカビオサ (没食子インク) になります。

また、DIAMINEのregistrar's inkP.W.AkkermanのIjzer-galnoten Blauw-Zwart英雄などの中国製ブルーブラックの一部も古典ブルーブラックインクです。更にブルーブラックではない色の古典インクとして、プラチナからクラシックインクポーランドのKWZ INKからIGインクが新たに発売されました。 *2

  • これらの研究結果は、このブログで公表している他、趣味の文具箱Vol.16, 23に記事を書かせていただきました。
  • 私の調製したインクが万年筆研究会 WAGNERの2010, 2012, 2014, 2015, 2016限定インクとして採用されました。
  • ヌルリフィルでお馴染Pen_Saloonさんの喜望峰インクとして採用されました。万年筆とヌルリフィルの部屋|Pen_Saloon
  • プラチナ クラシックインクの開発に協力させていただきました。*3

booth.pm

古典ブルーブラックの語源は2ch?

ちなみに古典ブルーブラックという言葉は、本やネット上の文章として残っているものとしては、2chのインクスレが起源のようです(古典ブルーブラックという便利な言葉 - 趣味と物欲)。それ以前は、混合型インクやパーマネントインクなどの表記が見受けられます。
古典インクは、ある程度の耐水性・耐光性があり、比較的裏抜けや滲み難く、書いた後の色の変化が楽しめ、昔ながらのインキ消しで消すこともできる上、ペン先が汚れたらアスコルビン酸できれいに落とすことができ、そして何より(ガラスペン等つけペンを除いて)万年筆でしか使えないインクなのです。

古典ブルーブラックの古い常識を疑う

万年筆を使い始めると、まず最初に、「古典インクは鉄ペンを腐食させる、金ペンでは使えない」と教わることが多いと思いますが、ここで言われる鉄ペンというのは昔のスチール製付けペンのイメージを引き摺っていて、現在のステンレスペン先の万年筆であれば古典インクを使用できます。実際にプラチナ万年筆は、ステンレスペン先のプレピーに古典ブルーブラックのカートリッジを添付して販売しています。
pgary.hatenablog.com
利便性や機能的な面だけで、古典ブルーブラック不要論をとなえる方もいらっしゃいますが、そもそもそれを言い出したら、何で万年筆使うんだってことにもなりますよね?(^^; それはともかく、個人的にはインクは好みが9割だと思っているので、自分で責任を取る限り、好きなインクを使えば良いと思います。

古典ブルーブラックに関するQ&A

今や空前の!?万年筆ブーム、新しく万年筆の魅力に取り付かれてインク沼に嵌り、古典ブルーブラック (古典インク) に初めて触れたという方も多いと思うので、Q&A形式で疑問に答えてみたいと思います。

1. 古典ブルーブラックや古典インクという言い方は間違いなの?

悩ましい問題です:所謂古典ブルーブラックを表す言葉として、パーマネントインク、混合型インク、没食子インク、iron gall ink等々色々な言い方があるのですが、どの言葉もちょっとずつ説明し足りないところがあります。正確に言うなら「タンニン酸あるいは没食子酸および鉄イオンを含む万年筆用インク」となり、長いので、この概念を一言で表すなら「古典ブルーブラック」とか「古典インク」と言うのが便利なのです。
詳しくは、古典ブルーブラックという便利な言葉 - 趣味と物欲をご覧ください。

2. 古典ブルーブラックは危険なインクなの?

いいえ:何事も使い方次第です。基本を知ってちゃんと使えば大丈夫です。
一口に古典インクと言ってもメーカーによってずいぶん違います。鉄分の多さで比べると、プラチナ<ペリカン<<R&K<ダイアミン レジストラーズ という並びで、鉄分が少ない方がペンには優しいですが、鉄分が多い方が耐水性や耐光性は高い。
また、使われている酸の種類が、プラチナやペリカンは硫酸、R&Kやダイアミン レジストラーズは塩酸で、硫酸の方がペンには優しいが、紙には塩酸の方が優しいかな?くらいの違いがあります。*4
総じて万年筆メーカーの古典インクは万年筆への影響が少なくなるように作られているようです。

2.1 ペン先への影響は?

古典インクの酸に耐えるように金ペンになったという経緯はありますが、鉄ペンについてもステンレスの改良が進み、現在の鉄ペン先は古典インクに耐えられます。*5 念を入れるなら硫酸系のプラチナやペリカンの方が腐食性は弱いです。
ただペン先自体は大丈夫でも、ペン先に施された鍍金、ペン先に近い所にある飾りリングや金属部分は腐食されることがあるので、気をつけてください。また特に金ペンでも、ピンクゴールド鍍金やルテニウムコーティングは剥がれる可能性があるので注意が必要です。
絶対に入れては駄目なのはパイロットのキャップレスで、ペン先が金のタイプでも、シャッター機構の動きが悪くなります。

ペン先が一見腐食した様に見えても、古典インクの成分が固化して付着しているだけで、アスコルビン酸を使えばきれいに落とせたという事例も報告されています。*6

2.2 紙への影響は?

没食子インクで書かれた昔の文献で、インク焼けという虫食いの様になる現象が知られています。*7 その原因として、硫酸と鉄イオンが考えられていて、硫酸の代わりに塩酸にすることはできますが、鉄イオンに関しては古典インクを使う限り避けては通れません。ただ、保存性が高い最近の中性紙でも同様の現象が起こるかは、まだ分かりませんので、数十年後にどうなっているかの検討が必要だと思われます。*8
ちなみに、40年前に古典BBで書かれたノートがブログで紹介されていましたが、それではインク焼けは起こっていませんでした。*9

古典インクが怖いなら、顔料やラメ入りインクだって別の意味で怖いです。怖い怖いといたずらに恐れるのではなく、何に気をつければ良いのかを知り、最後は自己責任だと割り切ってインクは好みが9割だと好きなインクを楽しみましょう。

3. 古典インクにできる沈殿物や黒い滓は酸化鉄なの?

いいえ:「タンニン酸あるいは没食子酸と鉄(III)イオンのキレート化合物」です。長いので、短く表記するなら「没食子酸鉄」とするのがよいでしょう。こちら(古典ブルーブラックインクの黒の色は鉄の錆の色? - 趣味と物欲)の実験結果もご参考にされてください。酸化鉄 (wikipedia:酸化鉄) とは別の物質です。
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4. 古典インクのアスコルビン酸洗浄法とは?

このブログで2010年に世界で初めて公開された、安価で安全で効果的な古典インクの洗浄法です。*10 ポーランドのKWZ INKの方も没食子インクについては、アスコルビン酸による洗浄を推奨されており、グローバルに認められた方法です。
pgary.hatenablog.com
古典インクがペン先等で固まった時に出来ているのは、鉄(II)イオンが酸化された鉄(III)イオンとタンニン酸あるいは没食子酸がキレート化合物を作り水に溶けなくなったものですから、還元してやることで水に溶けるようになります。酸性にするだけでも効果はありますが、還元性+酸性+キレート能があり、安全性も高いアスコルビン酸 (ビタミンC) が現状ではベストだと思います。
薬局やドラッグストアで購入できる局方品もありますが、食品添加物グレードのもので十分です。大袋で購入して余った分は、料理に使ったり、飲物に混ぜて飲んだりできるので、コストパフォーマンスは高いです。
どうしても洗浄に使う分だけ購入したいという時は、コンビニ等でDHCのビタミンCカプセルを購入し、カプセルを開けて中の粉末のみ溶かして使うという方法があります。
なおビタミンC入りの飲料など液体として売られているものは効果がほとんど無いようです。粉末を使用直前に溶解して使用するのが効果的です。

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一見鉄ペンが腐食しているように見えてもアスコルビン酸できれいに落ちることもあるという結果が報告されています。

5. ペリカンのブルーブラックは古典インクじゃなくなるの?

現時点ではいいえ:ラミーやモンブランの例があるのでこれから先のことは分かりませんが、少なくとも現状、定期的に話題になる「ペリカンBBが古典じゃなくなった」という話は、一部販売店の誤解による誤報のようです。
一部販売店の言っていることに、ラミーやモンブランが事前アナウンス無しに古典インクを染料に変えたこと、ペリカンBBが米国で販売できなくなっていることが信憑性を増して、流布している噂にすぎません。
この噂が出るたびに、関東、関西方面の方にご協力いただき、二価鉄試験紙で確認していますが、販売店が染料と言って売っていたロットも古典ブルーブラックでした。

また、ペリカンBBが米国で販売できないことから、古典インクが米国で販売できない、ペリカンBBに危ない成分が入っているという誤解がありますが、「米国のTSCA (有害物質規制法) の既存品目リストに載っていない物質がペリカンBBに入っているため、使うには申請と審査が必要になるが、費用もかかるため販売しないことにした」ということではないかと考えています。
古典インクの主要成分は、TSCAリストに載っていますので、載っているものだけで古典インクを作ることが可能です。問題となっているのは、古典インクに必須ではない成分だと考えられます。

私自身は古典ブルーブラックを自作してしまうくらい好きなのですが、耐水性、耐光性、耐薬品性が必要な用途では、正直なところ水性顔料ボールペンをお薦めしています。ちなみに私は、ユニボール VISION ELITEユニボール アイユニボール VISION ELITE、油性顔料ボールペン ぺんてる ローリーなどを使ってきて、最近はユニボール oneです。

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過去の古典インクに関する記事はここから

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「孤独のグルメ」のこの文章が好き

孤独のグルメ」と言えば、「こういうのでいいんだよこういうので」「うおォン 俺はまるで人間火力発電所だ」「モノを食べる時はね誰にも邪魔されず 自由で なんというか救われてなきゃあダメなんだ」等々名言に事欠かない作品ですが。

ふとした時に思い出す好きな文章が、「(くきくきくき) 固くて臭くて・・・まるで道端の草を食っているようだが マズくない!けっしてマズくないぞ!!」です。
「マズくない!けっしてマズくないぞ!!」のところは、「やらせはせん!やらせはせんぞ!!」の調子で脳裏に再生されます。
五郎が自然食の店に入り、なんだかんだと文句をつけながら、おまかせ定食をうまいうまいと平らげて、追加でいわしと大根のカレーライスを大盛りでたのむ回のセリフです。
ほうれん草に限らず、おひたしを食べる時は必ずこのセリフを心の中で唱えています。
それから、いわしと大根のカレーもずっと気になっていて、鳥取駅前のサバカレーも、このシーンを思い出しながら、五郎の気持ちになって食べました。
f:id:pgary:20201023010004j:plain
豚肉いためにカラシを付ける、レトルトカレーに魚肉ソーセージをトッピングする、というのも孤独のグルメから影響されています。

「植草甚一コラージュ日記 東京1976」のこの文章が好き

植草甚一さんのエッセイの中でも一番好きな作品が、「植草甚一コラージュ日記」です。
東京1976とニューヨーク1974の二冊が上梓されていますが、文庫本になっているのは東京1976の方だけです。
日記ですが、日記そのままではなく、日記を清書された手書きの原稿を、そのまま本にしてあります。つけペンだったりサインペンだったり、その時その時で色々な筆記具を使われていて、その筆跡がそのまま残っているのが想像をかきたてます。

植草甚一コラージュ日記 東京1976 (平凡社ライブラリー)

植草甚一コラージュ日記 東京1976 (平凡社ライブラリー)

  • 作者:植草 甚一
  • 発売日: 2012/08/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
日記の内容は、ほぼほぼ、原稿を書き、飽きたら出かけて、本と古本を大量に買い、お店を素見しては、気にいった雑貨を買い、コーヒーを飲む、という繰り返しなのですが、それが妙に面白い。
この本には好きな文章がたくさんあるので、1回じゃ済みそうにないのですが、ふとした時に思い出すのが、11頁(文庫版)の「あんがいエビのかき揚げおいしかった。胃のほうでオイシイと言った感じ。」という文章です。
エビに限らず、かき揚げを食べる時は、必ず思い出して、胃のほうでオイシイか、考えているような気がします。
pgary.hatenablog.com
植草甚一コラージュ日記〈1〉東京1976

植草甚一コラージュ日記〈1〉東京1976

植草甚一コラージュ日記〈2〉ニューヨーク1974

植草甚一コラージュ日記〈2〉ニューヨーク1974

「知的生産者たちの現場」のこの文章が好き

梅棹忠夫研究室で秘書をされていた藤本ますみさんが梅棹研究室の日常を書かれた「知的生産者たちの現場」は楽しそうな研究室の様子が伝わってくるホッコリとする本です。
この本の中で私が好きな文章は、35頁(文庫版)とまだ冒頭ですが、梅棹先生が魚一のお弁当を見ての一言、「きょうのおかずはおいしそうなグジやないか。」というところです。
そこからしばらく、お茶を入れて、魚の骨をとり、食事の描写が続きます。グジというのは甘鯛のことで、福井県の若狭で取れたグジが昔から京都に運ばれて食べられていたそうです。
ぐじ - Wikipedia
なんということはないお昼ご飯の風景なんですが、ゆったり目の時間が流れている昔の研究室の様子がうかがい知れて好きな文章です。

知的生産者たちの現場

知的生産者たちの現場

知的生産の技術 (岩波新書)

知的生産の技術 (岩波新書)

コミック版「狼は眠らない」の3巻(最終巻)を読みました。

小説家になろうで連載されている「狼は眠らない」のコミック版3巻が出ましたが、これで最終巻とのことです。
https://ncode.syosetu.com/n3930eh/
作者の支援BIS先生は、「辺境の老騎士」もヒットされていて、そちらはコミック版も6巻まで出ていますので、「狼は眠らない」もまだまだ続くだろうと思っていただけに、3巻での終了は残念です。
狼は眠らないの世界観に、コミック版の絵柄がびったりで、レカンとエダの冒険がこれから始まるというところで、俺達の冒険はこれからだ!ENDになってしまいました。
ノーマやヘレス、アリオスもこの絵柄で読んでみたかったのですが、3巻くらいまでの売れ行きで、一旦判断されるところがあるんでしょうね。

今は、シャングリラ・フロンティアのコミックが届くのが楽しみ

「シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜」は小説家になろうに連載されている小説です。
https://ncode.syosetu.com/n6169dz/
小説が発売される前に、コミックの連載が始まり、先にコミックの単行本が発売されることになりました。
pocket.shonenmagazine.com
主人公のサンラクは、クソゲーを好んで攻略するクソゲーハンターなのですが、めぼしいクソゲーがなくなったので、神ゲーと言われているシャングリラ・フロンティアを始めます。
SAOなどで同じみVRMMOゲームですが、デスゲームではありません。現実世界での高校生活もヒロインとの絡みも出てきます。
出てくるゲームがシャングリラ・フロンティアは勿論ですが、他の神ゲークソゲーも全部面白そう。そしてそれを本当に楽しそうにプレイする主人公達を見ていると、読んでいるこちらも楽しい気分になってきます。
なろうの前書き後書きを読むと作者様がガチのゲーマーであることが伝わってきますので、小説でも練られたゲームの設定、クソゲーの仕掛け、攻略の描写など全てが素晴しいです。

コミカライズも素晴しくて、小説の雰囲気を最高に再現されていますので、まずコミックから入って小説も読んでいただけたらと思います。
小説の方も、既にかなりの分量が投稿されている上に、エタらずコンスタントに続きを投稿されていますので、読みはじめてから、最新話に追い付くまでの間、面白〜い、そしてまだまだ読むのがいっぱいある〜という至福の時をすごすことができます。ただ読んだ後遺症として、モンスターエナジーとかカフェインがっつり系飲料を飲む量が増えました。既にコーヒー常飲のかなりカフェイン中毒なのが、更に悪化したカフェイン中毒になりそうなので、この手のパワードリンク系は極力飲まないようにしていたのですが、飲むためのハードルが下がったというか、つい飲みたくなるというか、何でかは読めば分かります。

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