趣味と物欲

博多天神界隈を本と文房具(万年筆とインク)と電子ガジェットを探して徘徊しています。

万年筆インクの用語を統一しないと伝言ゲームで混乱するばかりなのでインク沼では揃えませんか。

当ブログではアフィリエイト広告を利用しています

 あとで読む

万年筆インクの用語とか分類とか正直言って統一されていません。それは昔からの経緯もあるし、各メーカー間で統一されておらず、同じ用語を別の意味で使っている場合もあるからです。そもそもインクと言っていますが、パイロットだとインキです*1

個人的には、インクの性質による使用上の注意点の違いから、染料インク、顔料インク、古典ブルーブラックインクとざっくり分けるのが便利ではないかと思います。

染料インクは溶液(solution)、水*2の中に染料(dye)を溶かしてあります。
例えば、ローラー&クライナーのインクは日本の販売店だと顔料だと言っていますが、英語のパンフレットにはdyeと書いていますし、ローラー&クライナー本社は顔料じゃないと言っているそうです*3

顔料インクはコロイド溶液(colloidal solution)や懸濁液(suspension)、水の中に顔料(pigment)を分散させています。液体(水)の中に固体(顔料の粒子)が分散している状態で、コロイド溶液の方が顔料の粒の大きさが小さく沈殿したり分離しにくい。
プラチナ、セーラー、モンブラン等の顔料インクはコロイド溶液で、モンブランのパーマネントブラックが顔料であることを確かめるためにコロイド溶液のチンダル現象を利用しました*4。最近はやりのラメ入りインクは懸濁液に分類されるでしょう。

ややこしいのが古典ブルーブラックインクです。そもそも古典ブルーブラックという言葉が比較的新しい言い方で、定着しているわけではありません*5
このブログでは、古典ブルーブラックインクを「タンニン酸あるいは没食子酸および鉄イオンを含む万年筆用インク」と定義しています。
保存性から昔はパーマネントインクと呼ばれることもありましたが、モンブランが顔料インクをパーマネントと名付けたのでややこしくなりました。昔の本やウェブページでは混合型インクという言い方もあったようですが、あまり広まっていません。
また、古典ブルーブラックインクが酸化されると澱を生じることから、顔料インクと誤解されることもありますが、古典ブルーブラックインクの成分は本来全て溶解していますので、顔料インクではありません。

染料インクのブルーブラックと古典ブルーブラックでは耐水性や保存性などまったく異なるのに、LAMYやモンブランは特にアナウンスをせずに古典BBから染料インクに切り替えてしまいました*6 *7
インクの中身を変更するなら、販売店や雑誌を通じ、アナウンスをしっかりしていただけたらと思います。その際、メーカー担当者と販売店や雑誌の編集者の間でインク用語の定義を確認し、誤解の無いようにしてから伝達していただければと思います。