趣味と物欲

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古典ブルーブラックインクが、米国の廃液処理規制の関係で減ったというのは、ペリカン ブルーブラックとTSCAの件の拡大解釈ではないのか。

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米国の廃液処理規制の関係で古典ブルーブラックインクが減ってきたと、考えられている方がいらっしゃるかと思うのですが、元になった趣味文の以下の文章は、どこから得られた情報なのでしょうか。最近古典ブルーブラックから染料に変更した、ラミーやモンブランからの公式な情報なのでしょうか。

染料系を採用するのは、米国での廃液処理の規制も影響しているそうだ。
趣味の文具箱 vol.28

米国での廃液処理規制がらみの話ということで、心あたりがあるのは、以前書いた、ペリカンのブルーブラックインクは米国では販売できない?という記事です。ただこの話の骨子は、下記のように、環境に問題がある物質が使われていたからというわけではありません。

米国のTSCA (有害物質規制法) に、TSCA inventoryという既存品目のリストがあって、それに載っていない物質がペリカンのブルーブラックに使われていた。その物質が有害だというわけではなく、TSCA inventoryに載っていない新規物質として申請し、審査してもらう必要がある

TSCAに関することは、下記のページに分かりやすく書かれています。TSCAに関係する省庁は、Environmental Protection Agency (EPA)ですから、まさに廃液処理の規制に関わってきます。

米国へ化学物質(品)を輸出する事業者は、「有害物質規制法(Toxic Substances Control Act:TSCA)」とともに、「労働安全衛生法(Occupational Safety and Health Act:OSHA)」による規制を理解する必要があります。米国では化学物質(品)は、主として、環境保護庁(EPA)と労働安全衛生局(OSHA)が所管する2つの法律によって規制されています。

TSCA inventoryに収載されている物質は、既存化学物質なので、ペリカンのブルーブラックの輸入禁止で問題になった物質ではないということになります。TSCA inventoryは、下記のサイトで検索できますので、古典ブルーブラックを製造するのに必須の物質が収載されているか検索してみました
Substance Search | Substance Registry Services | US EPA

上の画像は没食子酸 (gallic acid) を検索した結果です。収載されていればこのように表示されます。
他にタンニン酸(Tannic acid)、塩化第一鉄(Ferrous chloride)、硫酸第一鉄(Ferrous sulfate)など、古典ブルーブラックに特徴的な化学物質はすべて含まれていました。また、古典ブルーブラックに必須ではありませんが、防腐剤に使われる石炭酸(フェノール, carbolic acid, phenol)も収載されていました。
つまり、ペリカンのブルーブラックで問題とされた成分を除いても、古典ブルーブラックを製造することは可能ですので、米国の廃液処理規制の影響により、すべての古典ブルーブラックが規制されるわけではないと考えられます。
古典ブルーブラックから染料系への変更が相次いだのは、以前書いたように、やはりコスト的な面が大きいのではないかと思います