趣味と物欲

博多天神界隈を本と文房具(万年筆とインク)と電子ガジェットを探して徘徊しています。

今週のお題「自分で作った◯◯」自作した万年筆用古典インクの広がり

今回のお題を見て真っ先に思い出すのは、やっぱり自分で作った「万年筆用古典インク」です。
当時、万年筆用のインクといえば、染料インクが主流となり、昔ながらの没食子インクの古典ブルーブラックは数社を残すのみという状況だったのですが、ちょっとした好奇心から「市販品のように実用できるものを自分で作ってみよう」と手を出したのが始まりでした。
pgary.hatenablog.com
このブログのトップページにも、古典インクについて、まとめた記事を固定していますし、経緯については、「古典ブルーブラックと万年筆と私 または私は如何にして心配するのを止めて古典インクを愛するようになったか」という記事に物語風にまとめています。
pgary.hatenablog.com
最初は思いつきレベルの実験でしたが、試行錯誤を重ねるうちに形になり、気づけばプラチナ万年筆から新色として発売されるまでに、自分の作ったものが、少しずつ広まり、誰かの筆記具ライフに加わっていくのは、なんとも言えず楽しい経験でした。
「自分で作った◯◯」と聞かれれば、やはりこのインクが一番印象深いという答えになりそうです。
今週のお題「自分で作った◯◯」

ペリカンジャパンによる4001ブルーブラックに対する公式見解の謎2025

下記の記事のページへのコメントで、伊東屋経由で問い合わせていただいたところ、メーカーからは没食子インクではないという回答だったという情報提供をいただきました。情報をご提供いただきありがとうございます。

伊東屋に問い合わせた処、下記の回答がありました。
お尋ねの件、メーカーに確認致しました。
ペリカン社の万年筆インク ブルーブラックですが、没食子インクではございませんでした。
特徴である、書いた後に酸化して黒くなる性質は残しているとのことでございます。

pgary.hatenablog.com
ちなみに私が二価鉄試験紙で鉄を含む没食子インクであることを確認したロットは下記の20Fが最後です。
pgary.hatenablog.com
また最新ロットを購入して確認しても良いのですが、また4001BBが増えてしまうので、本家ペリカンのページを確認してみました。

The ink 4001 Blue-Black tone can be categorized as relatively light-fast. It is an iron gall ink, which means that it is far more permanent than, for example, the 4001 in Royal blue or Brilliant black. Over the time, the color of the ink changes from blue/black to gray, though the ink will always remain visible. During development, we made sure that the concentration of iron gall is low enough to avoid corrosion. Consequently, the ink does not decompose in the paper used.
The ink is not document proof. We recommend “Fount India” to all customers seeking an ink that is even more permanent than our 4001.

www.pelikan-passion.com
がっつりと、iron gall ink (没食子インク) であると書かれています。
ただ、腐食しない程度に鉄の量を低く抑えて、紙への影響も抑えていること、そのためdocument proof (耐水性や耐光性) ではなく、その目的にはFount Indiaという別のインクを使うようにとのスタンスです。
pgary.hatenablog.com
また、上記のページで引用した本家ペリカンの昔のページは無くなっているようですが、そこには下記のように書かれていました。

4001 blue-black
The least complicated ink which is still relatively light resistant, is the ink "4001 blue-black", our item no. 310 607. This ink contains iron gall, which makes it much more resistant than for example the ink shades 4001 royal blue or 4001 brilliant black, but due to the addition of special ingredients, you can still use this ink without qualm in piston or cartridge fountain pens. Within time, the ink will change its tone from blue to gray, but it will remain visible. It is not quite as light resistant as the Fount India. Due to the small concentration of iron gall, this ink will not damage your paper (which sometimes happened with historic ink made of iron gall.)

以前はiron gallを含むインクという表現だったので、今はiron gall inkという、もっと直接的な表現に変わっています。
ペリカンジャパンの公式見解は依然として謎です。

趣味の文具箱掲載の万年筆インク数の変遷まとめアップデート 2025年1月 Vol.72まで

趣味の文具箱 2025年1月号 vol.72 を購入しました。68号以来1年振りとなるインク特集です。
68号の1109色から16色増の1125色が、巻頭に折り込みのペン&インクブランド 万年筆インクカタログに掲載されています。
それ以外に記事中で紹介されているインクもありますから、実際はもっと多くのインクが掲載されていることになりますが、数えるのが大変なので表紙に公式に書かれている数値をグラフには採用します。

これまでの趣味の文具箱掲載インク数の変遷をまとめたグラフと表です。
指数関数的に増えていたのが、インクカタログの数値だけだと、ほぼ横這いになっていますが、実際にはインクカタログに掲載されていないインクが大量に載っています。

今号で新規に大量のインクが掲載されたのが、中国の最大手ブランドが日本に初上陸したOstrich Inkです。様々な趣向を凝らしたインクを販売されていますが、最も低価格帯で普段使いの2シリーズが48mLで1,100円、古典インクの四神(鉄胆)は60mLで9,680円と、どちらかというと高級品の部類です。輸入品というのもあるでしょうが、円安の影響でしょうか。
また日本からもRainbow Paletteという新しいインクブランドが紹介されています。こちらは15mLで990円からと最近のインクとしては、かなり安価です。

号数 趣味文
発行日
インク
掲載数
備考
9 2008/1/30 208
14 2009/8/10 207 高橋良香 氏によるLab測定開始
21 2011/12/20 14号に追加
25 2013/3/20 21号に14色追加
28 2013/12/20 25号に58色追加
32 2014/12/20 431 28号に33色追加、6色削除
36 2015/12/10 470
40 2016/12/10 539 36号に56色追加
44 2017/12/20 602 40号に34色追加、デルタを削除
47 2018/9/20 747 44号に135色追加、2色削除
51 2019/9/5 1517 ペン&インクブランド804色、ショップオリジナル713色
INK 2020/5/8 2000 INK 万年筆インクを楽しむ本
55 2020/9/7 965 ペンブランド369色、インクブランド596色
59 2021/9/6 1017 ペンブランド374色、インクブランド643色
INK 2022/5/9 2500 INK CATALOG 万年筆インクを楽しむ本
64 2022/12/7 1077 ペン&インクブランド 万年筆インクカタログ
68 2023/12/13 1109 No INK, No Life
72 2024/12/12 1125 万年筆インクの現在地