趣味と物欲

博多天神界隈を本と文房具(万年筆とインク)と電子ガジェットを探して徘徊しています。

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万年筆用古典インクについて、文献を調査し、自ら実験してきた記録の主要な記事まとめ 本ブログのメイン記事
古典ブルーブラックと万年筆と私 または私は如何にして心配するのを止めて古典インクを愛するようになったか no+e版
万年筆適当主義 (鉄ペンに古典インク入れちゃうし、定期的な手入れもしてないよ。) 肩肘張らず、もっとカジュアルに万年筆を使おう。
ペリカンブルーブラックが古典ブルーブラックのままか定期調査 Lot. 20F (2021年3月) 古典インクのままです。
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アスコルビン酸の古典ブルーブラックインクの洗浄力をクエン酸やシュウ酸と比較する。

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万年筆用の古典ブルーブラックインク (iron gall ink) によるペン先の詰まりや汚れを取るのに、アスコルビン酸 (ビタミンC) が有効であるという記事 (古典ブルーブラックインクの万年筆へのこびりつきを化学的に落とす。 - 趣味と物欲) を書いてから、多くの方に検証いただきましたが (2010-07-05 - 趣味と物欲)、お試しいただいた方からは、「驚きの効果!」という評価をいただいています。
この洗浄法は、あくまで古典ブルーブラックインクの洗浄法です。酸化して水に溶けなくなった鉄-タンニン類キレート化合物を、アスコルビン酸で還元することで洗浄するので、染料インクや顔料インクには意味がありません
また、クエン酸やシュウ酸*1ではどうか、という質問も時々されます。クエン酸もシュウ酸もアスコルビン酸と同様に、還元能とキレート能がありますので、効果があることは予測できますが、どちらが良いのか実際に試してみました。

タンニン酸と塩化鉄(III) (塩化第二鉄) を混ぜて、酸化した状態の鉄-タンニン酸キレート化合物を調製し、左から、精製水、アスコルビン酸水溶液、クエン酸水溶液、シュウ酸水溶液を加えたものです。モル比で鉄とアスコルビン酸などが、1:2になるように加えています (キレートが鉄1に対しタンニン酸2で形成すると考えて)。
キレート化合物を溶解する効果の強さは、シュウ酸 > アスコルビン酸 > クエン酸の順で、シュウ酸が最も強力ですが、シュウ酸は、医薬用外劇物で、アスコルビン酸クエン酸より入手しにくいこと、シュウ酸と鉄のキレート化合物の水溶性が低いこと (シュウ酸鉄(II)二水和物は0.008g/100mL) から、やはりアスコルビン酸が良いのではないかと思います。

2012/7/18 追加実験
更に還元剤 *2 を添加量を1:3、1:4まで増やしてみました。アスコルビン酸は、沈殿物が更に溶け、液も澄んで来ますが、クエン酸は、黒い沈殿物がなかなか溶解せず溶け残ります。シュウ酸では、逆に液が白濁してきており、溶解性の低いシュウ酸鉄が生成していると考えられます。添加量を増やしてみる追加実験でも、やはりアスコルビン酸が良いという結果になりました。

鉄:還元剤 (キレート剤) のモル比 1:3

鉄:還元剤 (キレート剤) のモル比 1:4
左から順に、水、アスコルビン酸水溶液、クエン酸水溶液、シュウ酸水溶液、を加えています。

*1:シュウ酸はインキ消しの成分として使われています。

*2:ここでは、アスコルビン酸クエン酸、シュウ酸のこと