日常の中でふとした時に思い出してしまう文章を紹介しているこのシリーズ、最初の3回食絡みだったので、これではいかんと4回目は食以外の文章を選んだのですが、また食に戻ってしまいました。
やっぱり食と記憶は密接に繋がっているということで、けして私が食いしん坊という訳ではないと思いたい。
コロナ・ブックスの「作家のおやつ」は、色々な作家のおやつにまつわるエピソードを豊富な写真とともに紹介する本です。他にも、「作家のお菓子」「作家の酒」「作家の珈琲」「作家の食卓」などがシリーズで出ています。
「ビールで[好事福廬]を食べる。添えてある木製のスプーンで、ゼリー状の中身をすくいとり、口へ運ぶと、蜜柑とキュラソーの香りが口中へひろがり、なんともいえぬさわやかさだ。」
好事福廬(こうずぶくろ)というのは、京都の老舗「村上開新堂」の季節限定のお菓子で、蜜柑の果肉をジュースにし、キュラソーとゼラチンを加えて、くりぬいた蜜柑の皮に詰めて固めたもので、池波さんは、これをベランダに出して冷やしておき、湯上がりにビールのつまみにして食べるのです。
まだ食べたことはないので、好事福廬が販売されている11月〜3月に、京都に行って食べてみたいと思っています。
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この本を読んで知った後に見つけて、意識して食べたお菓子として、植田正治さんと瀧口修造さんの話に出てくる月世界本舗の「月世界」、同じく植田正治さんと市川崑さんの話に出てくる両口屋是清の「二人静」、古川緑波さんの話に出てくる舟和の「芋ようかん」があります。その土地に行くことがあった時に、少しずつ味わっていきたいです。