趣味と物欲

博多天神界隈を本と文房具(万年筆とインク)と電子ガジェットを探して徘徊しています。

2022年9月24日~のAmazonタイムセールで気になるもの。

何度もリピしているドイツ産 ノンアルコールビール クラウスターラーが特選タイムセール品になっています。
アルコール0%、脂質0%、100mlあたり26kcal、国産のノンアルビールに比べると、かなりビールに近いです。

私は48本セットを購入しました。

現代筆記具読本を読んで、万年筆の筆記角度について考えた。

万年筆を使いはじめて、いつ頃どこで、読んだり聞いたりしたのだったか、なんとなく「万年筆はボールペンよりも寝かせ気味の角度で書くもの」だと、いつの間にか思っていました。
pgary.hatenablog.com
野沢松男 氏の「現代筆記具読本 改訂新版」を読むと、p32-33「どこを握って書くかで好みがわかる」という節に、

筆記角度は、ほとんどの人が50~80度のところに入る。一般的に、ペン先に近い方を持って書く人は筆記角度が大きいし、逆に離れたところを持って書く人の角度は小さくなる。同時に前者の筆圧は強く、後者が弱いというのが通常である。

と書かれており、40°~90°までの筆記角度の図付きの表も掲載されています。

最近のウェブ上では、どう書かれているか調べてみると、趣味文CLUBには、

万年筆は立てぎみでも寝かせても幅広い角度で書ける。基本は約60度だが、小さい文字は立てぎみで、太い字をおおらかに書くときは寝かせぎみなど、文字に合わせて使い分けてみよう。

と書かれていて、45度、60度、75度で万年筆を持った図も付属しています。
18.182.111.144

フルハルターさんのページにも、80°、55°、35°の筆記角度で、筆記線の太さが変わる図が掲載されています。
万年筆のメカニズムその1 | 万年筆専門店フルハルター FULLHALTER

万年筆博士の「万年筆のオンラインオーダーフォーム」にも80度くらいに立てた筆記角度の選択肢があります。
fp-hakase.com

万年筆の本をたくさん出している出版社や、万年筆の調整もしてくれる万年筆専門店では、万年筆を寝かせて使うようには言っていないようです。

またブログの記事を検索してみても、いつも拝見している万年筆関連のブロガーの方々が、万年筆を立て、筆記角度を大きくしても筆記できることを記事にされていました。
plaza.rakuten.co.jp

ochanoshizuku.hatenablog.com

stationarylab.com

万年筆は「ボールペンよりも寝かせて書く」というよりも、万年筆は「筆記角度の自由度が大きい」というのが本当のところだと思われます。

しかし特に万年筆初心者向けをうたうウェブページで、万年筆の筆記角度は、ボールペンよりも寝かせぎみで45~60度にするとか、45~60度が理想と説明しているページも見つかりますので、何か元ネタがあるのではないかと思います。

野沢松男 氏の万年筆に関する知識は何故広まらなかったのか?

文具王の高畑さんも愛読していたというBTOOL (ビー・ツール・マガジン) を古本で見つけては、ちまちまと購入しています。

平成元年(1989年)11月17日発行のBTOOLマガジン 第2巻第12号 (通巻22号) p96-99に、野沢松男 氏が「文房具ピロートーク14 インクの歩み」という記事を書かれているのですが、これが素晴しい記事で、つけペンや万年筆のインクの歴史を見事にまとめており、化学的にひっかかる点もありませんでした。

エルバンが公証人用インクとして販売しているログウッドインクは、タンニン酸鉄インク (没食子インク) に比べると耐久性に劣ることや、

鉄ペンを腐食しないインクとして重宝がられた。しかし、その筆跡は耐久性に劣り、やがて退色して消滅してしまうことが分かったので、評価は一気にさがってしまった。

未酸化インク*1 の最初の記録は、1856年にドイツのレオンハルディが作ったアリザリンインクだが、使用された色素からレッドブラックだったこと、

アリザリンインクという名前は、当初、天然藍ではなく茜に含まれるアリザリンを使ったことからきている。

など新たな発見もありました。

野沢松男 氏について調べてみると、1983年に「現代筆記具読本」、1986年に「筆記具読本 改訂新版」、1994年に「文房具の歴史 文具発展概史」という本を文研社から出されています。
1986年の「筆記具読本 改訂新版」が手に入ったので読んでいますが、昔から万年筆の常識とされていたことで、最近、疑問を呈されていることが既に論じられていることに驚きます。

例えば、このブログでも再三記事にしている、ステンレスペンであれば古典インク (タンニン酸鉄インク、没食子インク) を使えるということも、この本のp36に、

最近は金属研究も進んで、金以外で耐酸性のある金属も開発されている。白ペンとかスチールペン *2とか言われる銀色をしたペンがそれで、これにはステンレス系の耐酸金属が使われている。そしてペン先としての性能も決して金ペンに劣るものではない。

と明記されていますし、

しゅん さんの論考で知られるようになった、ペン先の材質ではなく形状に着目した万年筆の硬軟の話も、p38-40にかけて「ペンの形状は書き味を暗示」という節で論じられており、ペン先の肉厚、ペン先の切り割りの長さ、切り割りの寄りについて触れられています。
しゅん さんの記事のように工学的な説明はありませんが、この節では、ペン先の材質には触れずに、形状と書き味について述べられています。
blog.livedoor.jp

今読んでも非常に納得感のあることが多数書かれているのですが、この本の内容があまり知られていないようなのが不思議でなりません。

pgary.hatenablog.com
pgary.hatenablog.com

*1:タンニン酸と鉄を含む液に、硫酸などを加え酸化が進みにくくしたインクで、現在の古典ブルーブラックインクに近いもの

*2:現在ではスチールペンというと、つけペンの鉄ペンのことを指す場合が多いので、ここはステンレスペンと読み変えた方が良い。