万年筆用のインクは万年筆メーカーからだけではなく、家内制手工業的な小さなメーカーからも多数販売されています。万年筆の懐の深さ (インクに対する適応力の高さ) と、万年筆ユーザーのインクへのこだわりの深さによるところだと思います。今回はそんなメジャーではないインクの中から、特に古典的な製法で作られているであろう4種のインクについて、趣味の文具箱 vol.16の古典ブルーブラックの研究手法を用いて分析してみたいと思います。すなわち二価鉄指示薬紙を用いた古典ブルーブラック度の判定です。伝統的な製法で作られた古典ブルーブラックには、鉄(II)イオンが含まれていますから、そのイオンと反応して赤橙色を示す指示薬でチェックをします。その他のメジャーな万年筆インクの結果については、ぜひ趣味の文具箱 vol. 16のすてラボ!の結果をご覧ください。ボトルインクとカートリッジインクで成分の違うインクがある等、意外な結果もあり面白いですよ。今回は、すてラボ!ではテストしていないインクから、古典ブルーブラックと言われている3種、ローラ&クライナーのスカビオサとサリックス、アメリカで購入したDIAMINEのRegistrar's Ink、それにログウッドから作られたエルバンの公証人用インク (Encre Authentique) の合わせて4種類です。positive controlとして古典ブルーブラックのペリカンBB、negative controlとして染料系のブルーブラックであるセーラーBBも一緒に試験します。以下の画像がその結果です。
古典ブルーブラックと言われている3種は試験紙が真っ赤に呈色しており、鉄の含量が高いことがうかがえます。それに対してエルバンの公証人用インクは鉄をほとんど含まないことが分かりました。公証人用インクはログウッドのタンニンを使ったインクですから、没食子のタンニンを用いる古典ブルーブラックと同様に、鉄イオンを含んでいるのではないかと予測していたのですが、意外な結果でした。最新化学工業大系 (最新と言っても昭和9年の最新ですが) では、ログウードインキの製法として、ヴィートによるものとワルターによるものが紹介されていますが、いずれもクロム酸塩を添加していますので、エルバンのインクもこのあたりの鉄以外の金属を使っているのでしょう。
ひさしぶりの古典ブルーブラックインクの話題でした。
- 古典ブルーブラックだからDIAMINEのRegistrar's Inkを購入。 - 趣味と物欲
- エルバンの公証人用インクの意外に身近な正体 - 趣味と物欲
- 桃栗三年柿八年 【Moleskine】ブルーブラックじゃない古典インク
- 出版社/メーカー: エイ出版社
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