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古典ブルーブラックインクは酸化鉄を含むインクという違和感

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古典ブルーブラックインクを説明するときに、よく使われるフレーズとして「酸化鉄を含むブルーブラック」というのがあるのですが、そのフレーズを聞くと何か落ち着かないものを感じます。酸化鉄と聞いて思い浮かぶのは、酸化鉄(II) FeO,酸化鉄(III) Fe2O3,四酸化三鉄 Fe3O4などですが、これらが古典ブルーブラックインクに溶けているイメージが湧かないのです。
古典ブルーブラックインクを調製する時は、硫酸鉄(II) (硫酸第一鉄)や塩化鉄(II) (塩化第一鉄)を用いますが、それらの水溶液は硫酸鉄水溶液や塩化鉄水溶液と言った方がしっくりときます。また、古典ブルーブラックには、更にタンニン酸や没食子酸を加えますので、水溶液中ではタンニン酸第一鉄や没食子酸第一鉄が出来ていると考えられます。古典ブルーブラックに関するバイブルとも言える、パイロットの「インキと科學」を調べてみましたが、やはりインキ瓶にある時を、タンニン酸第一鉄と没食子酸第一鉄、文字に書かれ酸化した時を、タンニン酸第二鉄と没食子酸第二鉄と書いてあり、酸化鉄という表現は出てきませんでした。
インキと科學の表記については、「万年筆評価の部屋」の「解説【インキと科學】 その1」をご参照ください。また、古典ブルーブラックで文字を書いた後に出てくる黒い色が、タンニン酸第二鉄や没食子酸第二鉄かについては「古典ブルーブラックインクの黒の色は鉄の錆の色?」の実験結果もご参照ください。
これらのことから、古典ブルーブラックを一言で言うならば、「タンニン酸鉄や没食子酸鉄を含むブルーブラック」ということになるかと思います。ちょっと長いという向きには、タンニン酸が入っていなくても、没食子酸は必ず入っているので*1「没食子酸鉄を含むブルーブラック」でも良いのではないかと思います。

*1:タンニン酸が加水分解されると没食子酸を生じるため。