趣味と物欲

博多天神界隈を本と文房具(万年筆とインク)と電子ガジェットを探して徘徊しています。

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古典ブルーブラックインクによるインク焼けに関する現時点での一考察

古典ブルーブラックインクによる紙の腐食はインク焼けと呼ばれ、資料の保存や修復の現場で問題になっています。私が自作している万年筆用のインクは古典ブルーブラックインク(没食子酸インク, iron-gall ink)の一種ですから、作り始めた当初からインク焼けの問題についても、ずっと考え続けています。
これまでにもブログで、使用する酸を硫酸より紙への影響が少ない塩酸にすることを表明したり、

硫酸は不揮発性の酸ですから、薄い硫酸でも放置しておくと、水分が飛び濃縮されて濃硫酸になり、紙を腐食するのです。

市販の古典ブルーブラックインクに含まれる酸が塩酸か硫酸かを調べてみた結果を公開しています。

主力製品に鉄ペンがあるか無いか、ペン屋さんかインク屋さんかで、塩酸性か硫酸性か違いが出た様に思います。

古典ブルーブラックインクによるインク焼けの要因として、
1. 硫酸による加水分解
2. 鉄イオン触媒による酸化反応
の2つが言われています。

一つは硫酸による酸性劣化で、これが紙の主成分であるセルロース加水分解を引き起こす。もう一つは鉄イオン(特に二価、三価の鉄イオン)で、これらが直接、あるいは触媒となって酸化反応が起こり、セルロースを劣化させる(Neevel 1995, Reissland et al. 2000)。

酸性紙の保存性が悪いというのはよく知られていることだと思いますが、これも紙の製造過程で用いられる硫酸アルミニウムの硫酸イオンが原因です。硫酸は不揮発性の酸なので、揮発性の酸である塩酸等を使うことで、この問題は緩和できると考えられます。ただ、金属の腐食には塩酸の方が影響あるので、鉄ペンや装飾のリング等は注意する必要があると考えられます(私自身も自作古典ブルーブラックを鉄ペンに入れて試験していますが、今のところ問題は起こっていません)。また、精製度の低い材料を使っていた昔の古典ブルーブラックインク(昔の古典というのは変な感じですが)は、沈殿を抑制するため大過剰量の酸を加えていましたので、最近の古典ブルーブラックインクよりも酸による腐食を起こし易いと思われます。
次に、鉄イオンは古典ブルーブラックインクに不可欠の成分ですから、鉄イオンを除くわけにはいきませんが、これも昔の古典ブルーブラックインクでは、鉄イオンと、それとキレートを作るタンニン酸や没食子酸の比が考慮されていなかったのに対し、最近のものは比率が一定に保たれています(例えば私の自作したインクは、塩化第一鉄と没食子酸がモル比1:1になるように調製されています)。鉄イオンとキレートを作る成分が充分に含まれているため、鉄イオンの触媒作用も緩和されているのではないかと思われます。
また前回のブログ記事の、中性紙と酸性紙上の古典ブルーブラック原液の変色速度の違いにより、

中性紙と酸性紙では、黒化速度にずいぶん差があることが分かりました。

中性紙は古典ブルーブラックの酸性をかなり中和しており、腐食も抑制するのではないかと考えられます。酸性紙の腐食が問題となり、中性紙が広く使われるようになってきたのは1970年代以降とのことですから、現在市販されている古典ブルーブラックインクが中性紙をどれくらい腐食するのか、しないのか、継続的に検討していく必要があると思います。

酸性紙の崩壊が社会問題化してきた1970年代に中性や塩基性の滲み止めを塗布して製造した中性または塩基性の紙である中性紙が広く用いられ始めた。

40年前に古典ブルーブラックで書かれたものがブログで紹介されていましたが、特にインク焼けなどは起こっていませんでした。

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