趣味と物欲

博多天神界隈を本と文房具(万年筆とインク)と電子ガジェットを探して徘徊しています。

石炭酸と鉄の錯体は古典ブルーブラックの色にどれくらい寄与しているか?

当ブログではアフィリエイト広告を利用しています

 あとで読む

古典ブルーブラックインクの筆記線の色の変化は、鉄の酸化により下記のように没食子酸と鉄の錯体ができることによるものです。
f:id:pgary:20170613210817j:plain
この反応は、フェノール性水酸基の検出反応として高校の化学の教科書にも載っており、没食子酸だけでなく、広くフェノール性水酸基に起こる反応です。
古典ブルーブラックインクの保存剤として昔から使われているものに、石炭酸 (フェノール) やサリチル酸などがあり、これらもフェノール性水酸基を有するため、塩化鉄(III) FeCl3と反応して紫〜赤紫を呈します。
これらの保存剤と鉄の錯体が、インクの色にどれくらい影響しているのか検討してみました。

↑上は筆記直後のもので、フェノールのみ,フェノールに塩化鉄(II) FeCl2を加えたもの,フェノールに塩化鉄(III) FeCl3を加えたものをガラスペンに付けて書いています。

↑筆記したものを1日放置したものです。フェノール + FeCl2は筆記線が若干黄色くなっていますが、フェノール + FeCl3のような黒っぽい色にはなりませんでした。
没食子酸とFeCl2を混合した液で筆記した時の色の変化は非常に速く、数十秒から数分以内に黒変してしまいますから、保存剤と鉄の錯体の色への影響は少ないものと考えられます。