【追記】バーガンディレッドが古典インクではないことを確認しました。
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万年筆のインクについて、色々と謎のまま放置していた宿題があるのですが、それを検討するべく新しくインクを購入しました。購入したのは下の画像の右側の3本、KWZ Archive Blue Black、MONTBLANC Burgundy Red、Aurora Blue Blackです。
まずは、モンブランのバーガンディレッドの謎から、去年の夏頃、バーガンディレッドには鉄ガリウムが含まれ、StarWalker Midnight Black万年筆のルテニウムコーティングを変色させる恐れがあるとアナウンスされたのです。
その時はまさかと思い、下記の様な記事を書きました。バーガンディレッドは、元々ボルドーと言われていた染料インク、モンブランのボルドーは趣味の文具箱 Vol.11ではpH5.34と書かれており、古典インク (iron-gall ink) のpHではありません。
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いつもの様に二価鉄試験紙を用いれば、すぐに判別は付くだろうと高を括っていたのですが、1/10に希釈して試験しても赤の色素の色が強くて、はっきり判定できません。
下の画像は、それぞれ1/10に希釈したインクを上段は二価鉄試験紙、下段は普通の濾紙で展開したものです。インクは左からプラチナ ブルーブラック (PL)、ペリカン ブルーブラック (PE)、ダイアミン レジストラーズインク (DIA)、KWZ IG アーカイブ ブルーブラック (KWZ)、モンブラン バーガンディレッド (M BR)、アウロラ ブルーブラック (Au)です。
二価鉄試験紙は、二価鉄が存在すると赤く変色しますので、上段で古典インクのPL、PE、DIA、KWZは展開した溶媒先端付近が赤くなり、古典インクではないAuは赤くなっていません。しかし、M BRは色素の赤がかぶるため判定できないのです。
それではと、普通のペーパークロマトグラフィでも展開してみました。右側がモンブラン バーガンディレッド、左はプラチナ ブルーブラックです。固定相は濾紙、移動相は70% エタノールを使用しました。
モンブラン バーガンディレッドのペーパークロマトグラフは、趣味の文具箱 Vol. 44 p58にも掲載されていますが、そちらは移動相が水なので少し形が異なっています。
プラチナ ブルーブラックでは、タンニン酸鉄 (あるいは没食子酸鉄) の黒色成分が原点に残り、青の色素が上に移動しています。モンブラン バーガンディレッドも原点が黒く、赤の色素が上に移動しており、良く似た感じになっていますが、紙との親和性が高い黒の色素や黒の顔料である可能性もあり、古典と確定はできません。
モンブラン バーガンディレッドと古典インクのプラチナ カシスブラックでロディアに文字を書き、更にその紙を流水で十分に洗浄してみました。
モンブラン バーガンディレッドの洗浄されずに残った色はタンニン酸鉄 (あるいは没食子酸鉄) の色に良く似ているように感じられます。
色々と試験してみましたが、モンブラン バーガンディレッドが古典インクではないことを示すようなデータは無く、古典インクだと考えた方が納得できるデータばかりが得られました。更に調べて確証を得るには、鉄やタンニン酸 (没食子酸) を分析し、成分を明らかにする必要がありそうですが、そこまでしなくても、モンブランがiron-gall inkだと言っているのだから、もう本当に古典インクなのかなと思いました。
ただ後は、古典のブルーブラックを古典のミッドナイトブルー、更に染料のミッドナイトブルーへと変更したモンブランが、染料のボルドーを古典のバーガンディレッドに変更するというのが、戦略的に納得がいかないだけです。
案外、古典ブルーブラックを染料に変更させられたインク開発者の逆襲だったりするのかもしれません。
【追記】バーガンディレッドが古典インクではないことを確認しました。
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