英語のiron gall inkに対して、古典インクというのは誤訳ではないかという話、誤訳というより、そもそも訳していないですが、正確さを欠いていると言われれば、その通りと言わざるを得ないです。
iron gall*1 inkを訳すなら、「タンニン鉄インク」というのが適当と思います。
タンニン酸鉄インクではない、没食子酸かもしれないから、没食子酸鉄インクでもない、タンニン酸かもしれないから、没食子インクでもない、鉄の要素が無いし、五倍子かもしれないから。
その点タンニンというのは、Wikipediaによると、「植物に由来し、タンパク質、アルカロイド、金属イオンと反応し強く結合して難溶性の塩を形成する水溶性化合物の総称」なので、タンニン酸でも没食子酸でも没食子でも五倍子でも問題無いです。
タンニン - Wikipedia
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上記の古典インクと最近呼ばれているインクの名称の変遷を書いた記事、「万年筆インクを3分類するのは、その性質や使用上の注意点が大きく異なるから。」の中でも、共通認識として共有されることで名称が定まることを示唆していますが、古典インクは最近の主流ではあるけれども、共通認識として共有されるところまでは行っていないので、まだこれから変わる可能性は大いにあると思っています。
ただ、iron gall inkを正確に訳さないと駄目なのかと言うと、それはまた別の話です。そもそもiron gall inkを入れる先のfountain penからして、泉筆と訳すこともありますが、結局、万年筆の方が共通認識として共有されているわけで、ここまで定着すると今更、正確な訳じゃないから泉筆と呼ぶように、というのは無理があるだろうと思います。
下記のページに「タンニンおよび鉄イオンを含む万年筆用インク」のことを何と呼んでいますか。というアンケートを作成しました。ご回答いただけたら幸甚です。
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*1:gallという単語には「苦い」というイメージがあり、そこから様々な苦い物の意味が派生していると考えられます。