古典ブルーブラックか否か
ブルーブラックインクが古典ブルーブラックなのか、そうでないのか、当時の万年筆愛好家の方は、筆記時の感覚や、書いたものを水に濡らした時の筆跡の残り方で、ほぼ正確に把握されていました。
色々な方の意見を総合してみると「モンブランとペリカンとラミーとプラチナが古典ブルーブラックだが、ボトルとカートリッジでは違うのでは」という感じではなかったかと思います。
二価鉄試験紙による古典インクの判別法
森さんからの宿題の1つ目「古典ブルーブラックか染料のブルーブラックか判別できないか」は没食子インクに関する文献を検索している時に目星がついていました。
古文書の保存修復分野では、没食子インクで書かれたものが劣化する「インク焼け」という現象が問題になっており、没食子インクで書かれているか判別するために、二価鉄指示薬紙 (二価鉄試験紙) が用いられます。この分野では、二価鉄試験紙を蒸留水で湿らせ、古文書の筆跡に押し当てて、赤く変色するかで判別します。
インク焼け資料への保存修復手当て-効果の比較実験 Ⅰ | 株式会社 資料保存器材
二価鉄試験紙を自作し、短冊状に切った試験紙を使って、ペーパークロマトグラフィの要領でインクを分離することで、古典インクか判別できることを見つけました。
趣味文による二価鉄試験
自作した二価鉄試験紙を趣味の文具箱 (趣味文) の編集部に送り、各種ブルーブラックインクを試験していただいた結果に対して解説を書くという形で原稿を仕上げました。
予想通り、モンブランとペリカンとラミーとプラチナのボトルインク、それからブルーブラックから改名したばかりのモンブランのミッドナイトブルーのボトルインクも古典ブルーブラックであることが確認されました。また、カートリッジでは、ペリカンとプラチナは古典ブルーブラックでしたが、モンブランとラミーは染料インクであることが確認できました。
余談ですが古典ブルーブラックという用語について
WAGNERやフエンテのような万年筆愛好家の間やネット上では、当時から古典ブルーブラックという用語は使われていましたが、使用の是非について物議を醸す用語でもありました。
趣味文に記事を書くにあたり、悩んだ末、古典ブルーブラックという用語を使いましたが、商業出版物では、おそらくこれが最初だったんじゃないかと思います。
古典ブルーブラックという便利な言葉 - 趣味と物欲
タイムリミットは迫る
自分のパートの趣味文の原稿は一応書き上げ編集部に送りましたが、森さんからのもう1つの宿題「古典インクを洗浄する良い方法はないか」は未解決のままで原稿に反映することはできませんでした。3月8日に家族ぐるみで1年間渡米することが決まっていましたので、タイムリミットは刻一刻と迫り、準備に追われてバタバタしていました。
そんな時「酸化してるんなら還元すれば良いじゃない」と閃きました。
2010年3月2日のことです。
まだまだ続きます。
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