「万年筆バイブル」という本が出ると聞き、早速Amazonで購入しました。作者の伊東道風って何者?と他に著書も無く謎だったのですが、文具店の伊東屋さんのペンネームとのことです。矢立肇 - Wikipedia的な?
- 作者: 伊東道風
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2019/04/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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明らかに間違っていると感じた点
P61: 染料インクの退色について
これは紙に染み込んだ染料が乾燥して、粉となって空気中に消えていくからです。特に赤の染料インクはこの傾向が強く、赤いインクを使っている万年筆は、キャップなど細かい空気の出入りがある部品に赤い粉が溜まったりします。
P64: 古典ブルーブラックの青の色素の退色について
そして、インディゴがもたらしていた青い色が、乾燥していくとともに空気中に消失し、文字の色は最終的に黒に近い色になります。
どちらの文章も染料の光による退色を、色素が昇華?して空気中に消えてしまうからと説明されているようなのですが、光で色素の一部構造が分解して色が消えてしまったためで、分解した物質は紙に残っていると思います。
正確な表現ではないなあと感じた点
P64: 古典インクの原理について
空気に触れることで、タンニン酸第一鉄がタンニン酸第二鉄へと変化します。酸化第二鉄というのは、簡単にいえば錆のことで、つまりは錆びることで黒へと変色し、水に溶けにくくなるのです。
途中まで「タンニン酸第二鉄」と正しい用語を使いながら、それが「酸化第二鉄」にドラスティックに変わるところに痺れます。ちなみに酸化第二鉄は、酸化鉄(III) - Wikipediaのことなので、タンニン酸第二鉄とは別物です。錆びるから黒くなるという説明は楽かもしれないですが、黒いのはタンニン酸第二鉄の色ですし、酸化第二鉄は赤錆で、弁柄の主成分ですからどっちかと言えば赤ですし。
間違いではないけれどモヤモヤする点
P65: 古典インクを製造するメーカーについて
海外でも、かつてはモンブラン社、ラミー社、シェーファー社といったメーカーが古典インクを製造していましたが、今、万年筆メーカー製のものはほとんど見かけなくなり、一部のインクメーカーが製造している程度です。
ペリカンのブルーブラックに言及していないところに、ちょっとモヤモヤしました。
P65: ステンレスのペン先の耐食性について
もし、ペン先がステンレスの万年筆で、古典インクを使うとなると、ダメージは相当なものになります。
どれくらいを相当なダメージと考えるかの見解の相違だと思いますが、ちょっとモヤモヤしました。
インクについては色々と突っ込みを入れてしまいましたが、万年筆の使い方や細部の説明、各メーカーの特徴まで、広く万年筆について解説した面白い本だと思います。