趣味と物欲

博多天神界隈を本と文房具(万年筆とインク)と電子ガジェットを探して徘徊しています。

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万年筆用古典インクについて、文献を調査し、自ら実験してきた記録の主要な記事まとめ 本ブログのメイン記事
古典ブルーブラックと万年筆と私 または私は如何にして心配するのを止めて古典インクを愛するようになったか no+e版
万年筆適当主義 (鉄ペンに古典インク入れちゃうし、定期的な手入れもしてないよ。) 肩肘張らず、もっとカジュアルに万年筆を使おう。
ペリカンブルーブラックが古典ブルーブラックのままか定期調査 Lot. 20F (2021年3月) 古典インクのままです。
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「万年筆バイブル」を買い、早速インクに関するところを読みましたが。

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「万年筆バイブル」という本が出ると聞き、早速Amazonで購入しました。作者の伊東道風って何者?と他に著書も無く謎だったのですが、文具店の伊東屋さんのペンネームとのことです。矢立肇 - Wikipedia的な?

万年筆バイブル (講談社選書メチエ)

万年筆バイブル (講談社選書メチエ)

万年筆の本を買うとすぐにインクのところをチェックしてしまいます。納得できる点もあれば、納得できない点もあったので、あまり細かい突っ込みを入れるのも野暮かなあと思いつつ、これが伊東屋の公式見解というのは、ちょっといかがなものかと感じた点について書いてみたいと思います。

明らかに間違っていると感じた点

P61: 染料インクの退色について

これは紙に染み込んだ染料が乾燥して、粉となって空気中に消えていくからです。特に赤の染料インクはこの傾向が強く、赤いインクを使っている万年筆は、キャップなど細かい空気の出入りがある部品に赤い粉が溜まったりします。

P64: 古典ブルーブラックの青の色素の退色について

そして、インディゴがもたらしていた青い色が、乾燥していくとともに空気中に消失し、文字の色は最終的に黒に近い色になります。

どちらの文章も染料の光による退色を、色素が昇華?して空気中に消えてしまうからと説明されているようなのですが、光で色素の一部構造が分解して色が消えてしまったためで、分解した物質は紙に残っていると思います。

正確な表現ではないなあと感じた点

P64: 古典インクの原理について

空気に触れることで、タンニン酸第一鉄がタンニン酸第二鉄へと変化します。酸化第二鉄というのは、簡単にいえば錆のことで、つまりは錆びることで黒へと変色し、水に溶けにくくなるのです。

途中まで「タンニン酸第二鉄」と正しい用語を使いながら、それが「酸化第二鉄」にドラスティックに変わるところに痺れます。ちなみに酸化第二鉄は、酸化鉄(III) - Wikipediaのことなので、タンニン酸第二鉄とは別物です。錆びるから黒くなるという説明は楽かもしれないですが、黒いのはタンニン酸第二鉄の色ですし、酸化第二鉄は赤錆で、弁柄の主成分ですからどっちかと言えば赤ですし。

間違いではないけれどモヤモヤする点

P65: 古典インクを製造するメーカーについて

海外でも、かつてはモンブラン社、ラミー社、シェーファー社といったメーカーが古典インクを製造していましたが、今、万年筆メーカー製のものはほとんど見かけなくなり、一部のインクメーカーが製造している程度です。

ペリカンのブルーブラックに言及していないところに、ちょっとモヤモヤしました。

P65: ステンレスのペン先の耐食性について

もし、ペン先がステンレスの万年筆で、古典インクを使うとなると、ダメージは相当なものになります。

どれくらいを相当なダメージと考えるかの見解の相違だと思いますが、ちょっとモヤモヤしました。

インクについては色々と突っ込みを入れてしまいましたが、万年筆の使い方や細部の説明、各メーカーの特徴まで、広く万年筆について解説した面白い本だと思います。