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東京文化財研究所の「未来につなぐ人類の技」洋紙の保存と修復について、没食子インクとインク焼けの話

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「未来につなぐ人類の技」は、近代の文化遺産の保存修復に関する研究会の内容をまとめた報告書です。Flash playerが必要ですが、デジタル版で全て読むことができます。
東文研_『未来につなぐ人類の技』
平成28年(2016年) 15巻は、「洋紙の保存と修復」についてで、インク焼けの話も書かれています。
未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復 | ActiBook
39頁にパピルスに書き残されていた没食子インクのレシピが書かれていますが、この処方では酸を加えて安定化させることはされていないようです。
また41頁に、インク焼けの要因として、

インクの黒色を出すために、硫酸鉄(II)が過剰に加えられていたことが判明しており、没食子インクの劣化メカニズムの決定的要因となる。
インク焼けは、過剰な鉄イオンに起因する。(要約)

とあるので、現代のプラチナやペリカンのブルーブラックは、含まれる鉄成分の量が少なく、また鉄の量を、没食子酸やタンニン酸などと、モル比で合わせてあると考えられるので、インク焼けが起こる可能性も低いと予想されます。
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