Lamyは、古典ブルーブラックを染料ブルーブラックに変更し、古典インク (Iron gall ink) からは手を引いたとばかり思っていましたので、インクの新シリーズ、クリスタルインクについても染料か、顔料だろうと思いノーマークでした。
しかし、前回の記事に書いたように、ベニトアイト (benitoite) は古典インクでした。
pgary.hatenablog.com
Lamyの日本語のページでは、筆記見本の画像中にベニトアイトのみdocument-proof*1の文字がありますが、成分について特に言及はされていません。
クリスタルインク 30ml (全10色) – LamyJP
Lamyのドイツ語のページには、DOKUMENTENECHT (document-proof) の文字がありますが、やはり成分については言及されていません。
LAMY Tinte T53 PREMIUM-FÜLLHALTER-TINTE
海外の万年筆愛好家達の間でも議論になっており、感覚的にIron gall (IG) inkだと感じている人は多いようですが、化学的に検証されているわけではないようです。
Lamy Benitoite Ink - Ink Reviews - The Fountain Pen Network
Lamyに問合せたら「古典インクじゃないと言われた」という投稿も見られます。
i have contacted Lamy and they told me it isn't IG
Lamy Benitoite Ink - Ink Reviews - The Fountain Pen Network
趣味の文具箱にクリスタルインクが登場するのは、Vol. 49の104頁です。
「ベニトアイト」は他のカラーに比べて耐水性に優れている。
と書かれており、筆記見本を用いて、耐水性のチェックもされています。
また、Vol. 55 (2020年10月号) の64頁では、ブルーブラック色の染料インクに分類されていますが、ベニトアイトのデータを見ると、pH 2.0、ペーパークロマトグラフィーの結果も62頁のペリカン ブルーブラックと良く似ているように思います。
Lamyの公式見解は、染料インクということだと思うので、今後も文具店や雑誌の記事などでは、染料インクとして扱われると思います。
古典インクは古典インクと分かった上で、気をつけながら使っていけば、決して怖いインクではありません。愛用者は、古典インクと意識して、粛々と使えば良いと思います。
LAMY ラミー ボトルインク クリスタル ベニトアイト LT53BN 30ml 正規輸入品
- メディア: オフィス用品
古典インクは金ペンでないと使えないという都市伝説もありますが、そんなことはありません。個人的なお薦めは、プラチナ プレピーから始めることです。
プラチナの万年筆は、プレピー → プレジール → プロシオンと徐々にステップアップしていって、金ペンの#3776センチュリーに到達できます。
pgary.hatenablog.com
また、古典インクが固まってしまった時には、アスコルビン酸 (ビタミンC) の水溶液を使って簡単に洗浄することができます。
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このあたりの古典インクに関する話を詰め込んだのがトップに置いてある記事ですが、どんどん増えてボリューム満点になってしまいました。
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*1:耐水性や耐光性があるという意味で使われていると思われる。